日本表面真空学会
2024年8月27日(火)10:45 ~ 8月30日(金)12:45
2024年07月16日
会 場
八王子市生涯学習センター(東京都八王子市東町5-6)
*JR八王子駅北口から徒歩4分、京王八王子駅から徒歩4分
宿泊先
ザ・ビー八王子(東京都八王子市明神町4-6-12)
*八王子市生涯学習センターから徒歩5分、JR八王子駅北口から徒歩7分、京王八王子駅から徒歩1分
真空技術は、電子の発見や白熱電球・真空管の発明に始まる数多くの科学技術を生み出した基盤技術です。21世紀の現代においても、ナノテクノロジー、半導体デバイス製造をはじめとするさまざまな研究開発、産業のフロンティアで、真空技術の利用は、さらに拡大・深化しています。真空技術が存在しなければ、現代の科学技術の進展と国内製造業の発展が停止すると言っても言い過ぎではありません。
日本表面真空学会では、真空を扱う方々が真空技術の基礎を理解し、装置を正しく運用し、さらには新たな技術の展開に対応できる能力を育むことを目的として、関連学協会の協賛のもとに講習会「真空夏季大学」を1961年以来、コロナ禍期間を除き、毎年開催してきました。
真空夏季大学は、真空工学の基礎となる事項を、受講者が適確に理解することに重点を置き、真空の科学技術において研究開発の実績を有する講師によるオリジナルなテキストをベースとした講義で構成されております。講師による一方的な講義に留まらず、実際に受講者一人一人が問題を解くことにより真空技術の基礎を理解し、真に応用できる能力を高めることを意図した演習を実施している点も大きな特長です。真空工学の基礎知識を確実なものとし、応用や実用問題にも対応できる力を備えた技術者・研究者を育成する絶好の機会と存じますので、是非、受講を検討下さいますようご案内申し上げます。受講された方には、日本表面真空学会より、修了証書を授与しております。
2013年度よりJVSJ誌に真空科学入門の解説記事を掲載しております。著者は真空夏季大学の講師経験者で、真空夏季大学での経験を背景として入門編にふさわしい講座を目指しています。「気体分子運動論の基礎」「真空と表面」「排気と真空ポンプ」「種々の真空計とそれぞれの計測原理」「真空用材料」「気体放出」「成膜の基礎」「プラズマの基礎」「真空部品と可動機構」「モンテカルロ法による真空配管に対する気体分子の通過確率計算」「真空技術基礎演習講座(1)」「真空技術基礎演習講座(2)」を掲載済みです。(JVSJ誌56巻6号、JVSJ誌57巻8号、JVSJ誌58巻8号、JVSJ誌60巻6号)すべて真空夏季大学の基礎分野の講義に対応しています。もちろん解説記事単独でも役に立ちますが、真空夏季大学への繋がりを強く意識した構成です。真空夏季大学を受講される皆様には事前に是非ご一読いただきたいと考えています。
また、第5回オンライン真空講習会入門講座を2024年7月3日(水)12時~2025年2月14日(金)12時に開催いたします。数式は極力使わないで、図や動画を利用して真空技術の基礎、真空計、真空ポンプ、真空材料等について解説して、真空夏季大学を受講する際に必要な最低限の知識の習得を目標とします。真空関連業務を始めて1年以内の方々、真空夏季大学を受講する前に基礎を復習したい方々は、この入門講座の受講をぜひご検討下さい。
真空夏季大学に収めることのできない、より高度な応用技術に関しては、少数の受講者を対象として「真空夏季大学真空応用技術講座」を開催いたします。本年度は「圧力分布計算ソフトウェアMolflow+ 講習」と「配管内の気体の流れ-真空システムの設計者に必要な気体の流れを考える-」を8月30日(金)14:00~17:15に開催いたします。この応用技術講座の受講もぜひご検討下さい。
講師とテーマ
「気体分子運動論入門」 小倉 正平(東京電機大学)
「真空と表面」 近藤 剛弘(筑波大学)
「真空システムの基礎」 柴田 恭(高エネルギー加速器研究機構)
「真空計測」 吉田 肇(産業技術総合研究所つくば)
「真空ポンプと排気系」 渡辺 光徳((株)大阪真空機器製作所)
「真空用材料とガス放出」 岡野 誠(日本電子(株))
「真空部品と可動機構」 桑島 淳宏(キヤノンアネルバ(株))
「成膜とプラズマの基礎」 沖村 邦雄(東海大学)
「演習・特別演習」 足立 純一(高エネルギー加速器研究機構)
磯野 晋((株)アルバック)
関口 敦(工学院大学)
武安光太郎(北海道大学)
山川紘一郎(日本原子力研究開発機構)
山下 翔平(高エネルギー加速器研究機構)
講義の概要
気体分子運動論入門(小倉正平)
「気体分子運動論」は、4日間の真空夏季大学を通して学ぶ「真空工学」の基礎となる理論である。例えば、希薄気体の性質をうまく利用して真空ポンプや真空計を正しく動作させるためには、ミクロな視点で気体分子の振る舞いをよく理解しておくことが必要となる。この講義では、まず圧力の定義や単位系、気体の法則など、気体の巨視的性質について復習する。その後に、気体分子の運動がもたらす圧力、気体分子の速度分布則、壁への入射頻度、平均自由行程、熱や運動量に関する輸送現象など、気体分子運動論から真空工学に応用されているテーマを重点的に学ぶ。また、コンダクタンスや排気速度といった真空工学に特有な量や用語についても解説する。
真空と表面(近藤剛弘)
気体分子は1 気圧では1cm3中におよそ1019個もあり、互いに衝突しながら飛び回っているが、圧力が低くなるに従い、気体分子同士の衝突は減少し、真空容器の内壁表面との衝突が真空の特性を決めることとなる。講義では、表面の効果が現れる条件を説明し、次いで、気体分子と固体表面との各種の相互作用について解説する。すなわち、気体分子の固体表面での反射や散乱、表面への気体分子の吸着とその逆過程の脱離、エネルギーのやりとりとしての熱的適応などについて解説する。また、清浄な表面を保つための超高真空技術について紹介する。
真空システムの基礎(柴田 恭)
真空システムを設計するためには、真空装置の排気特性を十分に理解しておく必要があるが、それには気体の流れについての知識が必要不可欠である。本講義では、稀薄気体の流れについての解説を行い、気体の流量を規定する要因、特に導管等のコンダクタンスについて詳細に説明する。また、単純な真空システムにおける実効排気速度や排気過程、漏れ試験等についての解説を通じて、真空システムを理解するのに必要な基本的な事柄の習得を目指す。更に、真空装置内の分子のふるまいを直観的に理解するために、真空装置内の気体分子の運動をモンテカルロシミュレーションや数値解法等の方法で解析し、動画化した結果を鑑賞する。その他にも、導管の通過確率、圧力分布、熱遷移等に関連したシミュレーション結果を動画として表示し、それぞれの結果や現象について解説を行う。
真空計測(吉田 肇)
真空計測は、大気圧から10-10Pa~10-11Paまで、15桁以上にわたる圧力範囲を計測する技術である。圧力範囲に応じて、様々な原理の真空計が用いられており、それぞれの真空計の特性を理解して使用することが重要である。本講義では、真空計測に関わる基礎的な知識に始まり、種々の真空計の原理、流量制御と流量計、真空計と標準リークの校正、真空計測に影響を及ぼす諸要因、真空計測における定量測定と不確かさの考え方について説明する。真空計は、本当は何を測定していて、それはどのようにして圧力に関連付けられているかを理解すると共に、圧力表示値にはどの程度の信頼性があるかについての考え方を説明する。
真空ポンプと排気系(渡辺光徳)
真空ポンプは、真空を作りだし真空状態を維持する最も基本的なコンポーネントである。真空ポンプの排気原理は、気体を輸送して排気するタイプと壁面での吸着作用を利用してため込むタイプに大別される。さらに気体輸送式の真空ポンプには、容積変化を利用して排気するものと気体分子に運動量を与えて排気するものがある。この講義では、これらの排気原理に基づいて現在広く使われている真空ポンプの動作原理やその特徴、さらに使用上の注意点を分かりやすく解説する。また、近年、半導体製造装置や電子機器分野で利用の機会が飛躍的に増大しているオイルフリーの排気システムや極限的な真空を生み出す極高真空装置についても紹介する。
真空用材料とガス放出(岡野 誠)
真空装置には、金属、ガラス、セラミックス、ポリマー(ゴムやプラスチック)など多種多様な材料が用いられている。これらの材料は、それぞれ装置の使用目的に応じてコスト、入手性、機械的、物理的、化学的特性などの他に、真空排気のし易さ、真空度(圧力)と真空の質(汚れ)の維持なども考慮して、選ばれる。本講義では、まず、真空用材料の選択基準について解説し、ついで、真空装置設計に必要な真空関連特性について説明し、さらに、真空用材料として、金属材料(ステンレス鋼、アルミニウム合金、その他)を主体に、ついで、ガラス、炭素、セラミックス、およびポリマーを紹介し、最後に真空用材料からのガス放出特性について解説する。
真空部品と可動機構(桑島淳宏)
真空部品の講義では、真空技術の基本である真空シール(気密シール)の構造と、各種の接合技術を論じたあと、それらのシール技術の応用として、各種の部品を解説していく。そのため、ここでいう「真空部品」とは大気と真空の境界で使用される部品に限定している。個々の部品についての解説は、超高真空用と、それ以上の圧力領域で使用するものと、分けて行うことを基本としている。これは真空領域によって、使用される素材や部品の構造が異なるためである。また、プロセス装置に不可欠な圧力制御機構についても説明する。可動機構の項目では、真空中で動かせる機構を組み込むに当たって、注意すべき点を解説する。真空中における摩擦係数の増大の問題から、それを解決する潤滑材の説明、摩擦を完全になくした浮上搬送機構などの説明をする。
成膜とプラズマの基礎(沖村邦雄)
真空工学の重要な応用である成膜とプラズマについて、基礎的な解説をする。真空蒸着法の原理とプラズマの発生法についてそれぞれ紹介したのち、プラズマを用いた成膜手法として、スパッタリング法についても触れる。基礎科目で学習した平均自由行程・容器壁面への入射頻度・付着確率といった概念が、実際の成膜過程にどのように影響するかを解説する。具体的には、得られる薄膜への残留ガス成分の混入、堆積粒子のエネルギーの違いによって生じる薄膜構造や諸物性の変化、などについて学ぶ。なおプラズマについては、「第4回オンライン真空応用技術講座」が準備されているので、より詳細かつ広汎な内容を学びたい場合には、そちらへの参加も推奨する。
演習(足立純一、磯野 晋、武安光太郎、山川紘一郎、山下翔平)
受講者を15名程度のグループに分け、各人が自ら演習問題を解き、講師の説明を受けることによって、真空科学・工学に必要な概念の理解を深めることを目標とする。具体的には、配管のコンダクタンスと圧力分布、真空計測の原理と実際、真空材料のガス放出、真空装置の排気過程、固体表面の吸着・脱離、平衡蒸気圧など、実際の真空装置の製作と運用において基礎となる事項について問題を解いていく。演習Ⅰでは、真空科学・工学において良く使用される公式などを使った計算を通して、単位や数量的な取扱いに慣れる。演習Ⅱ、Ⅲでは、真空科学・工学の基本的な問題を通して、問題の考え方、講義との関連、解答の導き方などを理解する。達成度テストにより、習熟度を確認する。
特別演習(足立純一、磯野 晋、関口 敦、武安光太郎、山川紘一郎、山下翔平)
World Café 方式の特別演習として真空Café(キャリア開発)を行う。World Café は Juanita Brown と David Isaacs によって、1995年に開発・提唱された「対話」による「気づき」の支援の手法である。真空夏季大学で学んだ知識を自分の中で咀嚼すること、多彩な参加者間で知識の共有化をはかり深めることを目的とする。種々の経験を持った参加者間で「真空」をテーマにした「対話」を実施する。この対話の経験から「気づき」を得て、自分自身の仕事の中に取り込むきっかけを支援する。名刺(20枚程度)と筆記用具を持参すること。
真空計、真空ポンプの展示(予定)((株)アルバック 稲吉さかえ、吉田 肇)
真空計、真空ポンプに対する理解を深めるために講義室において真空計、真空ポンプの展示を行う。
AirCourseによる達成度テスト、アンケート回答
真空夏季大学で学習した内容の達成度テスト、アンケート回答は、ラーニングシステム AirCourseにて実施いたします。
真空夏季大学受講者特典
第61回真空夏季大学受講者は、2024年9月3日(火)12時~2025年2月14日(金)12時に実施する第5回オンライン真空講習会に無料(別途申込不要)で参加いただけます。
会告(時間割)
PDFファイルのダウンロード
90名(先着順にて定員に達し次第締め切ります。)
(1)日本表面真空学会個人正会員 81,000円(受講料37,000円、宿泊費44,000円)
(2)日本表面真空学会法人正会員、維持会員、賛助会員に属する個人及び協賛団体会員 81,000円(受講料37,000円、宿泊費44,000円)
(3)日本表面真空学会学生会員 49,000円(受講料5,000円、宿泊費44,000円)
(4)一般 93,000円(受講料49,000円、宿泊費44,000円)
受講料:テキスト、パワーポイント配布資料代・消費税を含む。*テキストは事前に郵送します。
宿泊費:3泊4日分。朝食費(3回)、夕食費(1回)、消費税等を含む。
宿 泊:禁煙シングルルーム(1名1室)利用。部屋の指定はできません。ただし、特別の理由がある場合はご連絡下さい。
※上記(2)日本表面真空学会法人正会員、維持会員、賛助会員の企業名はこちらをご確認ください。
申込みは終了しました。
なお、「受講者の都合による取り消し及び不参加」の場合、参加費の払い戻しはいたしません。
ただし受講者の変更は、差し支えありません。
銀行振込(申込受付完了後、請求書をメール添付でお送りします。)
「受講者の都合による取り消し及び不参加」の場合、参加費の払い戻しはいたしません。
ただし、参加者の変更は差し支えありません。
低温工学・超電導学会、電気学会、日本加速器学会、日本機械学会、日本原子力学会、日本材料学会、日本真空工業会、日本半導体製造装置協会、日本分析化学会、日本放射光学会、表面技術協会、プラズマ・核融合学会
その他
*一般参加と日本表面真空学会個人正会員との受講料の差額12,000円は、日本表面真空学会個人正会員の年会費(10,000円)以上に相当します。真空夏季大学申込と同時の入会申込でも会員の参加費が適用されます。入会を希望される方は、こちらより入会申込手続きをお願いします。
*各都道府県には「人材開発支援助成金」制度があり条件により受講料が給付の対象となります。
*本事業は、公益社団法人八王子観光コンベンション協会のMICE開催助成金を活用しております。
問合せ先
公益社団法人日本表面真空学会 事務局
E-mail: office@jvss.jp TEL 03-3812-0266
日本表面真空学会 事務局
〒113-0033 東京都文京区本郷5-25-16 石川ビル5階 TEL:03-3812-0266 FAX:03-3812-2897 Email: