電池自動車での利用や再生可能エネルギーの貯蔵など、新しいエネルギーシステムに関わる蓄電池への注目は日々高まっている。
さらに、新型コロナウィルスの蔓延を防ぐために、個別の活動や遠隔地からのコミュニケーションが増えており、
これらで利用するエネルギーの分散技術の発展が現在望まれている。
このような技術においても、蓄電池の果たす役割は大きいと考えられており、蓄電池の更なる性能発展が期待されている。
リチウムイオン電池に代表される蓄電池において、電極と電解液の界面(電極/電解液界面)の物性
やそこで起きる化学反応の反応機構は、キャリアイオン伝導に大きな影響を与え、容量、サイクル特性、
充放電速度などの蓄電池の性能を左右する場合があると考えられている。しかし、最先端蓄電池の電極や電解液は
複雑な組成によって構成され、その界面は複雑な状態となっている、さらに、電極/電解液界面の解析は、
埋もれた界面であること、またナノレベルの空間分解能を必要とすることなどから、適用できる技術が限られている。
これらが要因となり、蓄電池の電極/電解液界面の物性や反応機構は、多くを想像に頼っており、
蓄電池の更なる性能発展の障壁となっている。
本講演では、まず、蓄電池の電極/電解液界面に関わる研究背景を説明する。
その後、講演者が進めてきた走査プローブ顕微鏡に代表される表面界面科学的な手法を用いて、
蓄電池の電極/電解液界面の物性や反応機構を解析した成果を、他のグループの研究成果と共に紹介する。
さらに、蓄電池の電極/電解液界面に関わる研究の今後の展望について説明し、蓄電池の研究分野における表面界面科学の展開を紹介したい。


