1.はじめに:モルフォ蝶の特異な青
生物ながら金属光沢をもつモルフォ蝶(南米産)の青い輝きは、土産物などで知られる。
発色の源は「ナノ構造」に基づく光干渉で、構造色の代表例とされる。しかしこの青は干渉に矛盾し、
虹色でなく「どこから見ても青い」。これはシャボン玉が真っ青なのと同じで、物理学には矛盾する。
2.原理の解明から実証
謎を解く鍵は鱗粉表面のナノ構造にあり、端的には規則構造(多層膜)で青色を作る一方、
不規則構造(乱雑さ)で他の色を妨げており、相矛盾する原理を組み合わせた巧妙な戦略である[1]。
3.発色への応用と多様な生産技術
本発色は構造由来なので、色素と違いUVや酸化による退色が無い。その上、干渉ゆえ高反射率ながら
「広角で単色」で、物理膜厚で色制御でき、省材料で無毒など、応用上の利点が多い。
そこで我々は計算・設計から量産化まで、多角的な生産技術を開発してきた[1,2]。
4.反射から透過への転用
一方で最近、上記の「反射」を「透過」に転用すると、高効率の採光窓ができると判った[3]。
この材料はモルフォ発色同様「明るく広角で虹色にならず」、白色でコンパクトである。
5.透過の応用技術
透過型モルフォ拡散板の作製には、反射型で培った多くの知見が役立ち、
フィルム化により既存の窓にも使える[4]。さらに照明への応用に大きな可能性があると分かってきた。
6.まとめ
本件はバイオミメティクス(BM:生物模倣技術)という広い枠で見ると、違った世界が俯瞰できる。
これは日本が遅れている欧州主導の「生態系BM」とも密接に関わり、本講演ではその流れも紹介する。
参考文献
[1]: AS: in “Biomimetics in Photonics”, ed. O. Karthaus, CRC Press (2012), pp. 96–115, 226–242.
[2]: AS et al.: J. Photopolym. Sci. Technol. 31 (2018), 113.
[3]: AS, K. Yamashita, et al.: J. Opt. Soc. Am. B 38(5) (2021), 1532.
[4]: K. Yamashita, AS et al.: Opt. Express 29(19) (2021), 30927.



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