(社)日本表面科学会中部支部主催/(社)応用物理学会東海支部 協賛
市民講座「やさしい表面科学」
波・振動と表面科学 −ミクロな電子波からマクロな地震波まで−
日本表面科学中部支部では、毎年、市民講座「やさしい表面科学」を開催しております。今年の市民講座のテーマは「波・振動と表面科学」です。4名の先生をお招きして、波・振動の概論および先端表面科学に関わるミクロな電子波のお話から、今年3月に発生した東日本大震災での地震波、津波といったマクロな波のお話をしていただきます。地震波は地球表面の地殻の振動、津波は海水表面の振動と捉えれば、表面科学の対象と考えられます。休憩時間には、世界でも類をみない構造物の耐震性能を実験的に評価するための振動実験施設の見学も用意しております。波の物理現象の理解とともに約100年周期とされる東南海地震に対する防災の観点からも皆様のご参加をおまちしております。
日時 2011年7月30(土) 13:30−17:05
会場 名古屋工業大学 2号館2階0221教室 (名古屋市昭和区)
(JR中央本線 「鶴舞」下車 名大病院口徒歩7分)
(地下鉄鶴舞線 「鶴舞」下車 4番出口徒歩10分)
定員 80名(参加費無料、定員超過等の場合はご連絡致します)
プログラム(講演概要)
13:30−13:40 あいさつ 吉村雅満(支部長、豊田工業大学)
13:40−14:30 「地震波から電子波 − 波の基本と最先端科学」
長谷川修司 先生 東京大学 物理学専攻
14:30−15:05 「道路橋脚のための新しい振動実験技術」
小畑 誠 先生 名古屋工業大学 社会工学専攻
15:05−15:40 −振動実験室の見学− 〜休憩〜
15:40−16:20 「地震波でみた東日本大震災」
山中佳子 先生 名古屋大学 附属地震火山・防災研究センター
16:20−17:00 「南海トラフ巨大地震への備え」
福和伸夫 先生 名古屋大学 都市環境学専攻
17:00−17:05 むすび 村上健司(副支部長、静岡大学 電子工学研究所)
お申し込み方法
FAXまたは電子メールで下記までお申し込みください。
その際、「やさしい表面科学 申し込み」と明記し、下記項目をご記入下さい。
・参加人数
・氏名
・所属(学校名、職業)
・住所
・電話番号
・E-mailアドレス等
なお、この申込みにてお知らせいただく情報は、市民講座への参加者の把握・連絡にのみ使用します。
締め切り 7月25日(月) 締め切りを延長しました。当日参加でも大丈夫です
お申し込み・お問い合わせ先
住所:〒468-8511 名古屋市天白区久方2−12−1
豊田工業大学 大学院工学研究科 山方啓
FAX: 052-809-1828
E-mail:yamakata@toyota-ti.ac.jp
【講演の概要】
「地震波から電子波 − 波の基本と最先端科学」
長谷川修司 先生 東京大学 物理学専攻
地震計ってどんな仕組みなんだろう?震源地ってどうやって割り出すのだろう?今回の大震災で、そんな疑問をもった人も多いのではないでしょうか。ものが振動することや波が伝わることは実は日常生活の中でたくさん経験しているはずです。公園にあるブランコ、夏祭りの夜店で買った水ヨーヨー風船、大きな音を出しているときの太鼓の皮やスピーカーの振動板、バイオリンの弦、風の強い日にヒューッヒューッとなる電線、また、海岸に打ち寄せる海の波や、静かな池に小石を投げ込んだときに同心円状に拡がる波。また、振動波動現象は目には見えないミクロな世界でもたくさんあります。二酸化炭素ガスが温室効果を持つことも実は振動現象の一種です。最先端のナノテクノロジーでは電気(電子)が波として伝わる世界なのです。本講演では、マクロからミクロの世界でみられるさまざまな振動波動現象を紹介し、それらに共通にみられる特徴を考えてみます。
「道路橋脚のための新しい振動実験技術」
小畑 誠 先生 名古屋工業大学 社会工学専攻
地震に対して強い構造物を作るためには、まず地震時に構造物がどのような動きをするのか、どのように壊れるのかを知る必要があります。この点、コンピュータの進歩した現在では大規模な数値シミュレーションが行われています。そしてこのようなシミュレーションを支えているのが実験なのです。地震に対応する実験は振動台実験ということになりますが、巨大な構造物に対してはなかなか実行できません。そこで静的でありながら精密制御によりたくみに振動台実験を再現する実験手法があります。名工大ではこの種の実験装置ではじめて2方向の振動を同時に再現できる実験装置を開発しました。この実験装置の話題を中心に道路橋脚の振動実験について説明します。
「地震波でみた東日本大震災」
山中佳子 先生 名古屋大学 附属地震火山・防災研究センター
現在様々な種類の地震計が世界中に展開されている。日本では1900年代初頭から地震観測(アナログ記録)が始まり、兵庫県南部地震以降たくさんの地震計(デジタル記録)が設置されリアルタイムで公開されている。我々は世界中に設置されている広帯域地震計の波形記録を使って地震時にどのように地震すべりが進んでいったかを準リアルタイムで解析している。地震計でとれる記録はどのようなものか、地震波形解析から得られた結果を中心に3月に発生した東北地方太平洋沖地震がどのような地震であったのかを紹介する。また地震時に生き延びるために必要な地震に関する基礎知識についても簡単に触れる予定である。
「南海トラフ巨大地震への備え」
福和伸夫 先生 名古屋大学 都市環境学専攻
東日本大震災により、低頻度巨大地震に対するわが国社会の脆弱性が改めて浮き彫りになった。わが国では、数多くの地震災害が、歴史の転換期を形作ってきた。しかし歴史地震を経験したときとは現代の社会状況が大きく異なる。地震と歴史、都市化による地形改変に伴うハザードの増大、構造物の密集化・大型化・高層化に伴うリスクの増大、中央集約化・高機能化に伴う災害時脆弱度の増大、人口偏在(都市集中・地方過疎)・少子高齢化・地域コミュニティ力劣化などに伴う社会や個人の生きる力の減退、など、わが国の災害対応力が落ちている。東日本大震災では、様々な現代社会の問題点をあぶり出した。東日本大震災の5倍にも達する被害が予想される南海トラフ巨大地震を前に、今後、何をすべきか、地震工学の立場から考えてみたい。